アオリイカ【障泥烏賊】
1. アオリイカの概要
分類 | ツツイカ目ヤリイカ科アオリイカ属 |
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学名 | Sepioteuthis Lessoniana |
英名 | Bigfin Reef Squid |
別名 | モイカ、バショウイカ、ミズイカ |
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 |
7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
1-1. 分類・分布
東シナ海、太平洋西部、インド洋の熱帯・温帯域に広く分布している。国内では北海道以南、とくに太平洋側では茨城県・鹿島灘以南、日本海側では福井県以南に多く見られる。
これまでアオリイカは単一種とされてきたが、近年ではいくつかの種類が確認されている。現状ではシロイカ型、アカイカ型、クロイカ(またはクワイカ)型に分けられ、そのうちの大多数がシロイカ型とされる。
アカイカ型はシロイカ型よりも南方系で、主に暖流の影響を受ける地域に棲息し、3㎏を超える大型に成長することも多い。クロイカ型は小型のものが多く、南西諸島や小笠原諸島に分布する。死サンゴに卵を産みつけるため、本州本土には分布しないとされている。
1-2. 特徴
外套膜(がいとうまく)のほぼ全長に、半円形のヒレ=エンペラがあるのが特徴。また、外套膜の内部には軟骨があるが、コウイカ類のように石灰質の殻は持たない。
外套長は最大で45~50cmに成長し、前述のアカイカ型の大きなものは体長1m、重さ6~7㎏にも達する。
オスの背中には白く細長い斑点模様が散在するが、メスは模様が不明瞭なことから比較的容易に区別することができる(写真)。また、外套長が20cm以下だとメスが多く、外套長が30cm以上になるとオスが80%以上となる。
吸盤が並んだ10本の腕を持ち、その中でも長い2本の触腕を自在に伸縮させて巧みにエサを捕らえる。
ほかのイカ類同様、周囲の環境や自身の状態によって体色を自在に変化させ、身を守る。さらに身の危険が迫ったときは、体内の墨汁嚢(ぼくじゅうのう)から墨を吐き出して敵の目をくらませ、吸い込んだ水を漏斗(ろうと)から吹き出して一気に逃亡する。
1-3. 性質
水深20~100mほどの沿岸の岩礁帯に棲息。春〜夏にかけては産卵のため浅場に接岸し、外套長が20㎝ほどまでに成長したメスが、アマモやホンダワラなどの海草や岩の隙間、沈木などに長さ15㎝ほどの房に入った卵鞘(らんしょう)を産み付ける(写真)。
夏〜初秋に孵化した幼体は、浅場で小魚や小型甲殻類を捕食しながら育ち、全長15~20㎝ほどまで成長する。その後、冬になると水温の安定した深場へ落ち、春に水温が15度を超える頃から、再び沿岸部へ戻ってくる。寿命は1年とされている。
食性は肉食で、イワシやアジなどの小魚のほか、ネンブツダイやベラ、エビ、シャコ類なども好んで捕食する。長い触手で獲物を捕らえる速度は0.1秒以下とされており、人間の目では捕らえることができないほど速い。捕らえた獲物は後頭部をかじり取って絶命させた後、安全な場所に移動してから捕食する。視力はよくないものの、夜間、光量に乏しい状況でも即座にエサを認識する能力に優れている。
なお、イカの細胞は浸透圧の調整能力に乏しいため、真水が入り込む河口域や流れ込みなどのエリアを嫌うとされる。
1-4. 文化・歴史
今やアオリイカ釣りの代名詞的存在にもなったエギ=餌木。エギによるアオリイカ釣りの歴史は古く、江戸時代後期に薩摩地方や南西諸島、紀州などで始まったとされる。エギが考案されたのは、漁師が誤って海中に落とした松明(タイマツ)にアオリイカが抱きついたことが、そもそものヒントになったとの説が有力である。
当時のエギは、桐などの木材を魚やエビの形に削り、尾部にカエシのないカンナバリ、腹部にオモリを装着したもので、現在のエギとほぼ同じ構造だったようだ。エギの本体は木部を焼き焦がしたものが主流だったが、その後、本体に触感の軟らかな布が巻かれるようになった。
なお、アオリイカの「アオリ」とは漢字名で「障泥」と書くが、これは馬の鞍の下に敷いて左右に振り下げ、乗り手の足に泥がかかるのを防ぐためのもの。外套膜の全長にわたってヒレが付いているアオリイカの形態から、障泥を連想して名付けられたものとされる。また、芭蕉の葉に似ることから「バショウイカ」と呼ばれることもある。
2. アオリイカの釣り方
アオリイカは全国各地の堤防やゴロタ場、磯などあらゆるフィールドで釣ることができる。釣り方としてはエギングやヤエン釣り、泳がせ釣りなどが人気で、船からの釣りが盛んなエリアも多い。
2-1. エギング
春は大型狙いで3.5~4号のエギを使うことが多いので、ロッド(釣り竿)は8〜9フィート前後が使いやすい。逆に、秋の数釣りシーズンでは、2.5~3号程度のエギを軽快に使える6〜7フィートのショートロッドが楽しめる。
ミチイトは、伸びが少なく潮流の影響を受けにくい細いPEライン(釣り糸)がお勧め。エギは、カラーはオレンジとピンクが定番。サイズは2.5~4号を用意しておけばよい。
釣り方は、エギをポイント(イカの居る場所)にキャスト(投げる)したら確実に着底させ、ロッドを鋭くあおりながらエギにアクションを加えていく方法が主流。ただし、釣り人が多い釣り場では、派手なエギの動きはかえってイカを警戒させてしまうことが少なくないため、よりゆっくりとエギを動かすスタイルも見直されている。
詳しい釣り方 | エギング入門(堤防からのイカ釣り) |
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製品例 | エギ |
2-2. ヤエン釣り
ミチイトの先端にセットした活きアジを自由に泳がせ、それを捕食するために抱きついたアオリイカを専用の掛けバリ(=ヤエン)でハリ掛かりさせる釣法。
竿はトラブルの少ないインターライン(中通し)仕様が使いやすい。リールもドラグ調整がしやすいリアドラグタイプが多用される(ヤエン釣り用として販売されている)。ミチイトはエサのアジを沈めやすくするために、比重のあるフロロカーボンが適する。ヤエンはいろいろなタイプがあり、自作するベテランも少なくない。
釣り方は、ミチイトを出しながら十分にエサを食わせてイカを安心させたら、徐々に寄せを開始。ある程度ミチイトの角度が付いてきたときがヤエン投入のタイミングだ。ミチイトが絡まないようにヤエンをセットして竿を立てる。ヤエンが自重でエサまで到達し、イカが驚いて逃げようとするとテコの原理でヤエンの掛けバリが跳ね上がって、イカにハリ掛かりするという仕組みだ。
製品例 | ヤエン |
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2-3. 泳がせ釣り
夜行性が強いアオリイカの習性を利用したのが、活きアジをエサにした夜の泳がせ釣りだ。
仕掛けは、エサをセットするためのハナカンと掛けバリを組み合わせた専用の市販の仕掛けを利用するのが手軽だ。ウキは大型の電気ウキを使用。エサは活きアジがベスト。
アオリイカの捕食する小魚は、常夜灯周辺や潮通しのいいエリアに集まりやすい。当然、そういったポイント(魚の居る場所)が狙い目で、最初はウキ下2~3mほどから探ってみたい。
この釣りでは早アワセは厳禁で、ウキが海面に没してから30秒ほど待ち、イカにじっくりとエサを食わせてから、ゆっくりとアワセ(イカに針を掛ける)を入れるのがコツとなる。
2-4. シャクリ釣り
東京湾などの乗合船で人気なのが、エギを使ったシャクリ釣り。中オモリを使うので、深場に落ちたアオリイカを攻略しやすい。中オモリは釣り場によって適合重量が違うので、船宿に確認しておきたい。エギのサイズは3.5~4号。カラーは、ピンク、オレンジ、ブルー、茶などが定番だ。
仕掛けを投入後、指示ダナ(イカが泳いでいる層)に中オモリをキープし、5~10秒ごとに竿をあおってエギに誘いを入れる。イカが乗ると根掛かりのように竿が止まるので、そのままリールを巻き上げてくる。
製品例 | エギ |
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2-5. ボートエギング(ティップランエギング)
シャクリ釣りが中オモリを使うのに対し、ウエイトのある専用エギを使用することで中オモリを排除してしまったのが(ティップラン)エギングだ。そのメリットは、イカがエギに触手を伸ばしてきたときの微妙なアタリが、ダイレクトに竿先に伝わってくること。これによって、従来のシャクリ釣りでは攻略できなかった状況を打破できるようになった。
釣り方は、ボートが流される反対側の舷からエギをフリーで落とし、着底後、数回シャクリ(イカを誘う為に竿をしゃくりあげる動作)を入れて5〜10秒ほどポーズ(停止)を入れる。アタリは竿先に小さく出るので、それを逃さずに鋭くロッドを立ててアワセ(イカに針を掛ける)を入れよう。
製品例 | ティップランエギ |
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3. アオリイカの料理
アオリイカの身は厚みがあって軟らかく、ねっとりと甘味のある食感が特徴的だ。刺身や寿司、マリネ、漬け丼などで生食するほか、醤油焼き、ソテー、煮物、揚げ物、一夜干し、イカ墨パスタなどさまざまな料理方法が楽しめる。
スルメなどでおなじみの沖漬けや、それをさらに冷凍した「ルイベ」も美味。身はもちろん、ワタや墨の部分も濃厚で奥深い味わいを楽しめる。作り方は、醤油、みりん、日本酒を適量煮立てて冷ました漬け汁に、新鮮なアオリイカを入れて2、3日冷蔵したものをさらに冷凍する。凍ったままスライスし、半分溶けかかった状態でいただくのがお勧めだ。
なお、おいしさと鮮度を保つには、「活き締め」をすることが大切。方法は、目と目の間にナイフかキリを突き立てるのが確実だ。
3-1. アオリイカのガーリックソテー
釣り好き、魚好きにはおなじみのアオリイカだが、一般的にはまだそれほど知られていない。その理由の一つは、値段が高いことにある。寿司店でも高級なネタの一つに数えられ、都市部のスーパーでは、店頭に並ぶことも珍しい。イカが取れる漁港付近の市場や鮮魚店で見られるくらいだろうか。
さて、ほかのイカに比べて食感が優しいアオリイカは、身がおいしいのはもちろん、エンペラやゲソも絶品である。ゲソは軽く塩を振ってあぶって食べると抜群。エンペラの刺身も独特の歯応えがたまらない。
刺身でも食べられる新鮮な身とゲソにニンニクを効かせて、塩、コショウで炒めてみた。
食べる直前にレモンを絞って頂こう。パスタにからめても最高だ。
イカ類は食感をよくするため皮を剥く必要があるが、アオリイカは比較的簡単に皮が剥ける。なお、刺身でも食べられる新鮮なイカを使っているので、ソテーする場合は、柔らかな食感を楽しむためにも、火を通しすぎないよう注意しよう。肝を加えると、よりコクのある味も楽しめる。
- アオリイカ(1.5kg級の身とゲソ)
- 1/2ハイ
- ニンニク
- 3片
- 塩、コショウ
- 各適量
- 炒め油
- 適量
- アサツキ
- 適宜
- レモン
- 1/8個
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1アオリイカを裏返した状態でまな板におき、裾のほうから包丁を入れ、胴の中心を切り開く。
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2内臓と身がつながっている膜状の部分を包丁でていねいに切ったら、頭(目がある部分)を持って、崩さないように注意しながらワタを外し、そのあとで骨も取り外す。
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3墨袋を破かないようにしてワタを取り除いたら、目と目の間を包丁で切り開き、水のなかで目と口を取り除く。口の周りはおいしい部分なので捨てずに利用する。
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4骨があった部分に包丁を入れ、身を二つに切り分ける。身とエンペラを分けたのち、包丁を入れた断面部分から皮を剥く。エンペラ部分も同様に皮を剥く。
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5薄皮はペーパータオルや布巾を使うとつかみやすい。これを取り除くと食感がよくなるが、それほど神経質にならなくてもよい。
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6身に浅く包丁目を入れたのち、やや厚みのあるそぎ切りにする。ゲソは、そぎ切りにした身の長さに合わせてぶつ切りにする。
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7軽く塩、コショウを振ったのち、みじん切りかすりおろすかしたニンニク1片を加えてよく混ぜ、下味を付ける。
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8フライパンに炒め油(今回はグレープシードルオイルを使用)をやや多めに入れて⑦を炒め、塩、コショウ、残りのニンニクで味を調える。火を通し過ぎないように注意。小口切りのアサツキを散らし、レモンを添えて完成。
3-2. イカ納豆
アオリイカはエンペラもおいしいので、無駄にせず、是非おいしく食べてほしい。炒め物にしたり、細切りにしてイカそうめん風の刺身にしたりと、さまざまな調理法で楽しめる。シンプルな刺身にちょっと手を加えて、歯応えを生かしたイカ納豆を紹介する。ごはんのおかずとしても、肴としても最適な一品だ。
タマネギを加えることで味と食感に変化がつく。釣れたてのコリコリしたエンペラと納豆の粘りで、いつものイカ納豆とはちょっと違ったおいしさが楽しめる。特別な仕事のいらないシンプルな料理だが、そのぶん食材のよさが生きる料理だ。
- アオリイカ(1.5kg級の身とゲソ)
- 1/2ハイ
- 納豆
- 1パック
- タマネギ、大葉、ショウガ、アサツキ
- 各適量
- 卵黄
- 1個
- 醤油
- 適量
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1作り方はいたって簡単。皮を剥いたエンペラを、包丁の先を滑らせるようにして細切りにする。
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2そこに納豆、粗めのみじん切りにしたタマネギ、千切りにした大葉、細かなみじん切りにしたショウガ、卵黄1個を加えてよく混ぜるだけ。
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